【ドッグアナトミー整体】犬の整体師に聞く!正しい姿勢を知ることでQOLが向上
- インタビュー
犬の世界にも整体があることをご存じですか?犬も人間と同じように、姿勢が悪かったり、筋肉の使い方が間違っているとケガをしたり、体の不調にもつながります。今回は、そんな犬の整体に注目し「ドッグアナトミー整体」の整体師として活動する南舘 園子(みなみだてそのこ)さんにインタビュー。
犬の整体だけでなく、人間の体のメンテナンスのプロであるピラティスインストラクターや犬のフィジカルトレーナー、犬のリハビリトレーナーの資格も持つ園子さんに飼い主の人生と愛犬の犬生をともに豊かなものにするための秘訣を伺いました。
目次
プロのダンサーの経験からピラティスの世界へ
東京で生まれ、現在は湘南の海のそばで愛犬と暮らしている園子さん。
前職はなんとプロのダンサー!13年間、日本のトップアーティストの専属バックアップダンサーとして活躍し、国内だけでなく海外でもツアーに同行するなどアクティブに過ごしていました。またバックアップではなく、自身もプレイヤーとして、CMにも多数出演。意欲的に活動していた園子さんでしたが「順風満帆に見えたダンサー人生の中で、唯一悩まされたものが身体の不調でした」と話します。
自分の体の癖や姿勢の悪さから、徐々に身体がついていかなくなり痛みを抱えながらステージに立つ日々。そんな時に出合ったのが、ピラティスでした。
ピラティスのトレーニングを行う中で、ピラティスが大切にしている原則「意識して動く事で、身体は変わっていく」ことを感じた園子さん。 また、ピラティスで「自分を信じる事ができたこと」、「やれば変われること」、「身体は応えてくれること」、「動く事が幸せにつながっていること 」を体感します。
Body(ボディ)、Mind(マインド)、Split(スピリット)の3つのバランスの調和を取りながら、身体が動いていく楽しさを実感できるピラティスの本質に共感した園子さんは、ダンサーを引退しピラティスのインストラクターとして活動をスタートしました。
愛犬の死を通して気づいた想い「犬が喜ぶ手助けがしたい」
ピラティスインストラクターとしていた活動していた2020年10月、愛犬・チワワのSOUL(ソウル)君が15歳8ヶ月でお空組に。
SOUL君が亡くなる前の数日間、体調が悪化したSOUL君からひと時も離れずずっと付きっ切りで介護をし続けた園子さん。その間、言葉を超えた想いが伝わってくる感覚があったそう。そしてそんなSOUL君から『これからは自分の人生を生きてほしい』と語りかけられたような感覚が確かにありました。それがきっかけとなり、SOUL君が旅立ってからはそのことの意味を模索する日々を送り続けた園子さんですが、「模索する中で、私の潜在意識の根底にずっとあった想いを思い出したのです。それは、「犬のために何かがしたい」、「犬が喜ぶ手助けがしたい」そんな感情でした。
人生は一度しかない。愛犬の犬生も一度しかない。一緒に過ごせる時間は限られている。その大切な日々をお互いが満たされ、満たし合える、そんな時間を過ごすためのサポートがしたいという目標が見えた園子さんは、人体のメンテナンスのプロであるピラティスインストラクターとしての強みを生かして、犬のボディケアを学び「犬と飼い主の両方の身体のサポートをしていこう」と進むべき道を決めたのでした。
ドッグアナトミー整体師としてできること
一念発起した園子さんは、のちに迎えた愛犬・リズム君と一緒に犬のボディケアについての勉強を始めます。
一言に犬のボディケアといっても、リラクゼーションのためのためのマッサージやケガの回復のためのリハビリ、アクティブに動くためのボディメンテナンスなど、手段もさまざま。いろいろなスクールや施設で見学や講習を受け、自分の目的に近いケアの方法を模索していきました。
そして、出合ったのが「ドッグアナトミー整体」。それは、園子さんが目指す「人も犬もみんな健康で、一緒に幸せな人生を歩んでいってほしい」という最終目的にピタッとハマるものでした。
「ドッグアナトミー整体」とは、ゼロポジションという姿勢の良いポジションになるように、手技や運動療法などを取り入れながら体を整えていく方法論。ピラティスの理論に似ています。
「整体」と聞くと体の不調を改善するためにするための治療のようなイメージがありますが、基本的には体の負担にならない正しい姿勢を知ることが重要なのだそう。
「悪い姿勢で胸を閉じて過ごしていたら、呼吸も浅く体も凝ってきます。そうならないためには、どうしたら胸を張って気持ちよく呼吸ができるのか。それにはまずは、マインドを変えることが必要になってくると思うんです。考え方を変えたら、体は自然に変わってくるんです。それは、人間も犬も同じなんですよ」
成功体験を大切にしてマインドを変えていこう
園子さんがドッグアナトミー整体を学ぶ中、フィジカル・リハビリトレーニング実習でリズム君と山にハイキングに行った時、ハッとさせられるエピソードがありました。
山道には木の枝がたくさんあったため、一緒に歩くリズム君は木の枝の前で足を止めることも。そのたびに園子さんはすぐに抱きかかえてリズム君を障害物と対峙させることはありませんでした。「危険を排除することが、犬にとって最善な方法だと思っていたんです。でも実習の恩師から、すぐに抱っこせずに犬がどう対処するか様子を見て、というアドバイスを受けました」。そしてそれを実践してみることに。
小さな体で障害物を超えることが心配でしたが、心を鬼にして「できるよ、大丈夫」と語りかけリードをちょっと引いて促すと、リズム君はこれまでおびえていた木の枝をまたいだのです。それを繰り返していくと最後には楽しそうに得意げな顔をして、ためらいなくジャンプして枝を飛び越えることができるようになっていました。
小さな成功体験を積み重ねていくことで、尻尾もピンッと上に上がって、顔は自信に満ちあふれています。それは、犬自身のメンタルとフィジカルを同時に強化する手助けをしていくような作業でした。
もしかしたら飼い主が愛犬に過保護に接することで、無意識にワンちゃんから成功体験を奪っていることがあるんだということに気がついたそう。
飼い主が気づくことで愛犬の犬生のQOLが変わる?
現在、園子さんの犬の整体に通ってくる方たちのきっかけはさまざま。「愛犬がなぜか右足だけあまり使いたがらない」とか「歩き方がおかしいような気がする」など、病院に相談しても解決しなかった問題を抱え、漠然とした不安の中で施術を予約する人も多いのだそう。
「整体と聞くと、年を取ってからの不調を改善するために通うところというようなイメージがあるかもしれませんが、実はそうではないんです。若いワンちゃんでも早い時期から姿勢のクセなどを見抜き、運動療法などを行うことで姿勢が改善していくんです。ケガや不調を未然に防ぐことにもつながるんですよ」と園子さん。
そして人も犬も同じで、心と体はつながっている。背中が丸く曲がってしまって顔を上げることができないワンちゃんが、背骨が伸びて顔を上げられるようになる。顔が上げられるようになると、大好きな飼い主さんをよく見上げて、お互いによく目が合うようになり、笑い合える日が増えます。そうやって、人も犬も一緒に元気になっていって楽しい時間を共有していけるためのサポートができるなんて、すてきなメソットですよね。
「まだまだ日本では知られていない犬の整体ですが、まずは、飼い主さんが愛犬の体の構造や姿勢などをよく観察して、愛犬の体を知ることに興味を持ち、こういった整体というアプローチの手段もあるんだということを多くの人に知ってもらいたいです。大切なワンちゃんの体のサポートができるこの仕事を通して、飼い主さんとワンちゃんたちみんなが、健康で幸せな時間を過ごすためのお手伝いができたらいいですね」と優しい笑顔で話してくれました。
犬と人、両方の身体のプロだからこそできること
犬の整体師とピラティスインストラクター、今もなお両立し続けている園子さんですが、両方のプロフェッショナルだからこそ、より分かることやつながることがあります。そして園子さんの施術では、生物の違いによって理解が難しい私たち飼い主に対し、人体を使ってかみ砕いて犬の身体の構造などを説明してくれるのも特徴的。また、犬と一緒に飼い主の身体や姿勢をチェックしてくれたりするのも、園子さんならではかもしれません。
他には、たとえば散歩中のリードやバッグの持ち方など、犬がいるからこそ起こりうる身体への負担の対処方法、犬と一緒にできるトレーニング方法なども教えてもらえます。犬と人、両方の身体のプロだからこその強みですね。
さいごに
犬のボディケアの中でもまだあまり知られていない「犬の整体」。少しでも気になることがあれば、問題が起こる前に犬の体のプロへ相談してみることが愛犬が幸せな犬生を送ることへの近道かもしれません。園子さんのお話には、愛犬と飼い主が、お互い健康で幸せに暮らしていくためのヒントがたくさん散りばめられていました。
「人がボディケアのためにマッサージに行ったりスポーツジムで運動したりするのと同じように、犬の世界でもボディケアのメンテナンスをするのが当たり前となるような世の中になってほしい」という園子さんの想いが、多くの飼い主のみなさまに届きますように。
- NAME
- ドッグアナトミー整体 DOGCARE RHYTHM SOUL "SONOKO"
- Writer:おおくぼ あい