食べ物で犬の寿命が変わる【動物ライター湘子の愛犬たちとの歩み】
- コラム
INUMAG読者のみなさま、こんにちは。動物ライターの今崎湘子です。INUMAGではペットフーディストとして、犬のごはんに関する「与えてもいい食材」や「体にいい食材」シリーズをお届けしています。この連載では、私自身の経験を交えた愛犬との生活についてお話していきます。
第2回は「食べ物で寿命が変わる話」として、私の人生で一番長いときを過ごした初代犬カールの17年間における生活を振り返り、ペットフーディストとして学んだ今だからこそ、気付いたことをお伝えします。
目次
昭和時代の犬ごはん?!
私が幼少期から大学生までをともに過ごした犬は柴犬に似たオスの雑種犬。当時、ドッグフードの種類はまだ少なく、7歳頃から夜だけは白米に煮干しやこま肉を混ぜたものを与えていたのを覚えています。1日の給与量を朝晩の2回に分けていたもののずっと同じフードではつまらないのではとの考えからでした。見た目はいわゆる「猫まんま」のような「犬ごはん」で、ペットフーディストになった立場としては、ツッコミどころ満載のレシピです。当時の写真はなかったので、再現してみました。
インターネットでざっと調べても、昔は犬に残飯をあげていたという情報は多く、最近になってようやく犬のごはんが栄養組成まで追究されるようになったのを感じます。
犬の主食ってごはんじゃないの?
そもそも、犬のごはんの主食はタンパク質ということをINUMAG読者のみなさまはご存じでしたか?人間の主食は炭水化物。日本で暮らす私たちは白米を主食としてる方が多いと思いますが、犬の主食は肉や魚だということに驚かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
見た目はこんな感じ。今、私が一緒に暮らしている愛犬リリーのある日の夕ごはんです。人間だったらもっと野菜を入れなければとか、白米を添えたいって思うようなメニューですね。犬は肉食よりの雑食です。理想的な犬のごはんの割合はタンパク質が49パーセント、脂質45パーセント、炭水化物はわずか6パーセントでいいのです!お肉が大好きな私としては羨ましい限り。
犬にとって必要な5大栄養素とは?
愛犬には家族として、いつまでも元気でいてもらいたいものです。犬はタンパク質を多く求めていることをお話しましたが、犬は他にどんな栄養をとったらいいでしょうか。よく言われている犬に必要な5大栄養素って何でしょう?それは、1.たんぱく質、2.脂質、3.炭水化物、4.ビタミン、5.ミネラルです。この5大栄養素と「新鮮なお水」が生命維持に欠かせない大切な栄養素。これらを意識して、日頃から愛犬にバランスの取れたごはんと生活環境を守ってあげられるといいですね。
話は愛犬に戻りまして、そんな「昭和の犬ごはん&ドッグフード」を与えていたカールですが、最終的には16歳9カ月と長生きをしてくれて、市より長寿犬として表彰をしてもらうほどでした。朝食に与えていたドッグフードの良さもあるかもしれませんが、これは食事だけでは計り知れない寿命には大切な何か、関係性があると思わずにはいられません。
犬にも感情がある話〜食欲との関係性〜
カールはよく吐いたり、食べなかったりした思い出がたくさんあります。当時、湘南に住んでいたわが家、カールの誕生日である7月25日は、毎年江ノ島の花火大会当日で(現在、日程は変更されています)夜になるとバーン!バーン!と花火の爆音が響き渡りました。聴覚の優れた犬にとって、花火の音は誕生日プレゼントどころかお仕置きのような、恐怖を感じる出来事だったことでしょう。体をブルブルと震わせて、しっぽを足と足の間に挟んで「怖いよ〜」と全身でアピールしながら私たちのそばに体を寄せていました。そして、あの昭和の犬ごはんを嘔吐。どうやら、ストレスは消化にも良くない結果をもたらします。
他にも、母が親戚の都合で数日関西へ行って家をあけるとごはんを食べられないことがありました。家族が1人いないという環境の変化と心配する気持ちから食欲が湧いてこなかったようです。
また、私のいとこが犬を連れてわが家に泊まりに来た際にも、食後すぐに吐いてしまうことがありました。そのときは、花火のときのようなストレスを抱えた態度や恐怖心はまったく見られず、その犬とケンカしたようなこともなかったのに。むしろ仲良く過ごしてるように見えたけれど、愛犬は環境の変化に弱く、繊細な一面を持ち合わせた子でそれが胃腸に出やすい体質だったんだと思います。
「生きるために食すること」はとても大切。でも、食事を取るには、食べ物を受け入れられる健康な体と心のバランスがどちらも整っていないと難しいことを実感した思い出でもあります。
ドッグフードの栄養基準AAFCOって?
ここで、あらためてドッグフードについて説明します。先ほどから栄養バランスの必要性をお伝えしましたが、ではどのドッグフードを選んだらいいの?見極め方が分からない、という話をよく耳にします。読者のみなさまが与えているドッグフードには「総合栄養食」と表記がありますか?
日本では「ペットフード公正取引協議会」での規約により、ペットフードを4つに分類して目的や用途に合わせて表記しています。それが1.総合栄養食、 2.間食、3.療法食、4.その他の目的食です。ペットフードは「総合栄養食」と記載されてるものから飼い主が選択することになりますが、では総合栄養食ってなんでしょう。
それは、AAFCO(米国飼料検査官協会)のガイドラインを採用し、その基準を満たすと総合栄養食と記載できるようになっています。AAFCOとは、犬の栄養学に関するあらゆる研究結果から必要な栄養素とそれらをどのくらい取る必要があるかの推奨値が提示されています。また、米国以外で製造されたフードではFEDIAF(欧州ペットフード工業会連合)の栄養基準を採用しているメーカーもあり、総合栄養食と記載がなくても栄養バランスが整っているものもあります。
「日本で暮らす犬たちにとっての栄養基準」が算出された表記がなされるようになると、もっと飼い主として選びやすくなるのではというのが、今後の課題のような気がします。いずれにしても、ドッグフードの栄養組成が整えられたおかげで犬の寿命が延びていることもあるようです。
犬の食欲がないときには原因を
今回はカールが食べなくなったり、吐いたりした経験談を書きましたが、INUMAG読者のみなさまにとっても愛犬の胃腸・消化問題って一番多いのではないでしょうか。カールのように原因が分かっているときはいいのですが、これまで迎えてきた犬の中ではすぐに原因が分からずに、どうも季節の変わり目で下痢しやすいという子もいました。
季節による急激な温度変化は愛犬の体調にも影響を及ぼします。きっとどの犬も一度は、ストレスや体調変化などいくつかの原因から食べられなかったりや吐いたりしたことがあると思いますが、その原因を探ること自体が愛犬のことをよく考えるきっかけとなり、パートナーとしての絆を深めることにもつながると思います。
愛犬に長生きしてもらうには飼い主の愛情が特効薬!
これまで愛犬のごはんについていろいろと情報をお届けしてきましたが、シニア期まで生きてくれたカールの最後は排せつも私たちの手で、立つことも困難になってくれば時間をみて庭へ連れ出して、一緒に日光を浴びて、という介護の日々がありました。
そして、さよならの朝、私は愛犬の顔色が悪いのを感じとれました。たとえ毛で覆われていても、毎日大好きな愛犬の顔をなで、匂いを感じてきた私にとって、愛犬の茶色い目の周りや黒色の唇でも貧血のように薄くなっていたのが分かったのです。
実はこの前夜、ほとんどごはんを食べなくなっていたにも関わらず、独身寮から久々に帰ってきた姉がごはんを与えるとがんばって食べてくれたという奇跡がありました。最期のときも家族がそろった日曜日を選ぶところが、カールなりの家族への最大限の愛だったと感じました。人間よりも寿命の短い犬ですが、おかげで私たち人間は命の尊さを学ばせてもらいます。いずれは愛犬リリーもシニア期を迎えていきますが、1日でも長く一緒にいられるよう、私はあたたかい愛情がいちばんの栄養剤で、またはいつかの治療の特効薬にもなると信じて、心のつながりと信頼関係を大切に接していきたいと考えています。
さいごに
今回は犬の食事と寿命についてお伝えしました。愛犬と飼い主はお互いにとって大切な生きるパートナーだと思います。命あるものだからこそ、楽しいだけではなく、安心できて安全な場所でストレスなく過ごせるよう守ってあげたい。飼い主としてそのために必要な情報を得ることはとっても重要なことだと思います。犬たちが家族として一緒に暮らせて良かったと心から感じられるよう、どんなときもコミュニケーションを取っていきたいですね。
今回のコラムを最後まで読んでくださりありがとうございます。この記事を通して出会ったINUMAG読者のみなさまと愛犬との大切な毎日が、満開の笑顔であふれますように。
- Writer:今崎 湘子