犬の「毛」について学ぼう!被毛の種類や換毛期のお手入れ方法
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犬の全身を覆う毛は「被毛」とも呼び、犬にとって大切な役割を持っています。そこで犬を迎える際にぜひ注目いただきたいのが、この「被毛」のこと。ただ見た目が違うだけではなく、抜け毛の量、日々の生活からブラッシングといったお手入れの仕方まで、この被毛が大きくかかわってきます。今回はそんな犬の「被毛」について、その役割や換毛期のこと、毛が抜ける犬と抜けない犬の違いなど、愛犬と過ごす上でぜひ知っておきたい「毛」の知識についてまとめてみました。これから家族の一員となる犬がそして迎えた愛犬が、どんな被毛を持っているのか、ぜひ参考にしてみてください
目次
犬の毛「被毛」とは?その役割と毛の構造
犬の皮膚は人間より薄く、大変デリケートです。だからこそ、体を覆う被毛は「皮膚や体を守る」という大切な役割を持っています。人間にも髪の毛や体毛といった毛はあるものの、皮膚が厚いため「守る」という役割はそれほどなく、それゆえ比べると犬の被毛と構造にいくつか違いが見られます。
「オーバーコート」と「アンダーコート」の役割
人間の場合、ひとつの毛穴につき1本の毛が生えていますが、犬はひとつの毛穴に数本の毛が生えています。さらに生え方によって2種類の被毛に分けられ、それが「オーバーコート(上毛・一次毛)」と「アンダーコート(下毛・二次毛)」です。「オーバーコート」は表面に長く出ている、コシのある毛。粗く生えていて、主に皮膚へのダメージ(紫外線や雨、ウイルス・細菌、衝撃)から保護する役割があります。一方「アンダーコート」は、オーバーコートの下にある、短くやわらかい毛。密生していて、防寒、保温、保湿、防水といった役割を持っています。この2種類の毛は、人間と違いしっかりと体を守るための構造と言えるでしょう。
体温調節と体調チェックの役割
犬にも毛穴はあるものの、肉球を除き「汗腺」がないのが特徴です。つまり、肌から汗が出るということがありません。その分、体温調節は毛を生え変えたり、「ハァハァ」という呼吸(パンティング)によって行います。そして飼い主にとっても、被毛は大切な役割を持ちます。それが「体調チェック」です。犬の被毛は体調のバロメーターとも言われており、毛艶や毛並みを見ることで「体調状態」を知ることができます。ストレスの有無、栄養不足、さらには病気も、日々の被毛チェックによって一早く気付けることも。愛犬の異常にいち早く気付くためにも、艶はあるか、毛はパサついていないか、脱毛してないかと、日頃から毛並みの状態を見ることをおすすめします。
被毛の衣替え「換毛期」とは?時期はいつ?
体温調節の役割がある、犬の被毛。そのため、その季節を快適に過ごす工夫というのもあります。それが「換毛」です。年に2回、夏の暑さや冬の寒さに備えて、季節の始まる前に適切な被毛に生え変えます。時期は「春から7月頃まで」「秋から11月頃まで」ということが多く、換毛をする時期である「換毛期」に入ると、約1カ月ほどの時間をかけて古い毛を取り除きます。
換毛期が遅い・うまく換毛ができない犬は要注意
最近、換毛期が遅れたり、換毛がうまくできない犬がいるようです。基本的に換毛は、気温の変化や日照時間を感じとり始まります。そのため、換毛期が始まる時期の目安はあるものの、毎年同じ月にというわけではありません。暖冬や冷夏によっても換毛が遅れてしまうことはあるため、多少のズレはしょうがないでしょう。ただし、ある程度暑くなったり寒くなってきたにも関わらず、換毛が始まらない、換毛ができていないという場合は注意が必要。夏毛や冬毛が十分に揃わず、次の季節に対応できない可能性があるからです。こういった現象の一番の理由は「気温や日照時間の変化が感じ取りづらい生活」です。たとえば日のあまり当たらない部屋や空調が整った部屋でほとんど過ごしたり、散歩が夜ばかりになってしまったり。換毛がしっかりできるよう、日中に散歩へ行き季節の変化を感じ取れるようにするなど、日々の生活にも気を遣ってあげると良いでしょう。
換毛期に「毛が抜けない犬」と「抜ける犬」
すべての犬に換毛期があり、そのとき毛が抜けるというわけではありません。というのも、換毛で抜けるのは主に「アンダーコート」です。そして犬種によっては、このアンダーコートがない犬もいます。
このように換毛期がなく毛があまり抜けない、オーバーコートのみの犬を「シングルコート」、換毛期があり、その際毛が抜ける犬つまりオーバーコートとアンダーコート両方を持つ被毛を「ダブルコート」と呼びます。
換毛期がなく、抜け毛が少ない「シングルコート」
オーバーコートだけを持つ「シングルコート」の犬種は、換毛期がありません。それもそのはず、換毛で抜けるアンダーコートがないからです。といっても、通常の毛の生え変わりはあるため、まったく抜け毛ないということではないのでご注意を。犬種によっては思ってたより毛が抜けるという犬もいるため、気になる方は事前にお迎えする子の毛質をしっかり調べておくと良いでしょう。またアンダーコートがない分、寒さに弱い傾向があります。冬には洋服を着せるといった、防寒対策が必要です。
「シングルコート」の代表犬種
プードル、ヨークシャー・テリア、マルチーズ、ミニチュア・ピンシャー、グレートデン、イタリアン・グレーハウンド、ダルメシアンなど。中でも毛が抜けづらいのがプードル、ヨークシャテリア、マルチーズ。意外と抜けるという声が多いのがミニチュア・ピンシャーです。
換毛期に抜け毛がある「ダブルコート」
「ダブルコート」の犬は、オーバーコートとアンダーコート、両方の被毛を持っていて、年に大体2回ほど換毛を行います。換毛期にはアンダーコートの毛が抜け生え変わり、夏に向けた換毛では、密度の低い涼しいアンダーコートが。冬に向けた換毛では、密度の高いあたたかなアンダーコートが生えてきます。比較的に暑さに弱い犬種が多く、その分夏は熱中症対策が必要です。
「ダブルコート」の代表犬種
柴犬(ほか日本犬)、ダックスフンド、ポメラニアン、フレンチ・ブルドッグ、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデンレトリーバー、シベリアンハスキー、ビションフリーゼ
とくに抜け毛が多いとされているのが、柴犬、ゴールデンレトリーバー、シベリアンハスキー、コーギー、サモエドです。ダブルコートの中でも比較的抜け毛が少ないのはシーズー、ビションフリーゼ、ミニチュアシュナウザー。ダブルコートだから、必ずしも抜け毛が多いというわけではなく、犬種によってもさまざまです。
個体によって違う犬種
同じ犬種でも個体によってダブルコート、シングルコートが変わる犬もいます。たとえばチワワ、パピヨン、パグといった犬種です
チワワには、ロングコート(長毛)とスムースコート(光沢のある短毛)と、毛質の違う個体がいますが、基本的にいずれもダブルコートが多いとされています。ただし血統によっては、チワワの原種(スムースコートのシングルコート)に近い個体もいるので、一概には言えません。またパピヨンも同様で原種はシングルコートですが、血統や北欧といった寒い地域産のパピヨンにはダブルコートの個体も存在します。パグは基本的にダブルコートが多いものの、毛色が「ブラック」のパグの中にはシングルコートの子もいるのだとか。
このように、明確にダブルコートやシングルコートを判断するのが難しい犬種も存在し、実際に飼ってみなければわからないケースもあります。もしどうしても毛質で選びたいという場合は、親犬の毛質や毛の生え方、子犬でなければ換毛期の様子などで推測できることもあるので、ブリーダーやお店の方に相談されると良いでしょう。
「ヘアレス」の犬種
毛がないこと(無毛)で有名なチャイニーズ・クレステッド・ドッグ、メキシカン・ヘアレスドッグ、アメリカン・ヘアレステリアといった犬は「ヘアレス」と呼ばれています。
被毛がない分、もちろん抜け毛もありません。ただし被毛の役割である、皮膚の保護、保温・保湿などができないため、日々の過ごし方や皮膚ケア等に一層気を遣う必要が。もしヘアレス犬をお迎えする場合は必要なケアをしっかり理解し、犬が快適に過ごせるよう準備しましょう。
犬の抜け毛対策とおすすめの掃除法
換毛期はもちろん、日常的に抜け毛の多い犬は「抜け毛対策」をしてあげると良いでしょう。たとえ犬の抜け毛が多くとも、対策法はもちろんあります。ぜひお試しください。
対策①ブラッシングを毎日ていねいにやる
とくに大切なのが換毛期前、つまり日々のお手入れです。その中でも優先したいのが「ブラッシング」をていねいに行うこと。日々ブラッシングをしないのとするのでは、やはり換毛期で抜け毛が落ちる量が違います。
対策②服を着せる
服を着せるのも対策のひとつです。やはり家具や床、服についてしまうと取るのはなかなか大変。未然に防ぐという意味で、お洋服を着せるのはとてもおすすめできます。洋服は季節に合ったものや、全身を覆う術後服のようなものを選ぶと良いでしょう。
対策③サマーカットにする
もともとカットが必要な長毛種の犬であれば、サマーカットにするのもひとつの手です。本来カットの不要な犬種の場合は、絶対にしてはいけないというわけではないものの、皮膚を守り体温を調節する役割の被毛を減らすことになるので、かえって負担となってしまうことも。サマーカットを考える際は、まずトリマーの方に相談をすると良いでしょう。
対策④抜け毛対策グッズを活用する
昨今はさまざまな抜け毛対策グッズが出ています。とくにカーペットやソファについた被毛は取りづらかったりコロコロでは限界があるため、たとえば「ペット抜け毛クリーナー」といった便利グッズの導入を考えてみてはいかがでしょうか。コンパクトで小回りが利くかわいいフォルムながら、衣服やソファ、カーペットにびっしりついた抜け毛もごっそりとれる、パワフルなクリーナーです。
抜け毛を捨てるのも「ワンタッチ」。使っていて「気持ちが良い」「爽快」という声も多数。また、換毛期や日常的に抜け毛が多い犬は、毛が絡まることで壊れることがない丈夫なグッズがおすすめです。「ペット抜け毛クリーナー」の場合、掃除機のように目詰まりがなく水洗いで何度も使えるので、長くそして経済的にお使いいただけます。
さいごに
犬の被毛には大切な役割があり、犬種によってもさまざまな種類がありました。ブラッシングは毛のお手入れや皮膚のケアはもちろん、犬との信頼関係を築く機会でもあります。そしてときには、病気やケガの早期発見につながることも。毛の種類によってお手入れ方法も異なるため、ぜひお迎えする家族の毛質を理解し、犬も飼い主も快適に心地よく過ごせる環境を作りたいものですね。犬のウェブマガジンINUMAGでは、楽しく学べる情報をたくさん発信しています。LINEでも最新情報やニュースを随時発信中。ぜひお友だち追加の上、お楽しみいただけるとうれしいです。
- Writer:かい わかこ