犬の幼稚園ってどんなところ? 「社会化」と「遊び」を通じて人と犬との関わり方を学ぶ
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犬の幼稚園ってどんなところ? 「社会化」と「遊び」を通じて人と犬との関わり方を学ぶ

みなさんは、「犬の幼稚園」をご存じですか?言葉の響きで、なんとなく犬を預かってくれる場所というイメージぐらいしかない人も多いのではないでしょうか? ペット先進国の欧州では、犬を飼っている人にとっては一般的になっている犬の幼稚園(犬の預かり施設)ですが、まだまだ日本ではあまり詳しくは知られていないようです。

今回は、実際に犬の幼稚園へお邪魔して、幼稚園で日ごろワンちゃんたちがどういう生活をしているのかを潜入レポートしてきました。

犬の幼稚園がどんなところなのか?具体的に何をする場所なのか?犬にとってどんなメリットがあるのか。詳しくご紹介していきます。

人と犬が共に楽しく快適に暮らせる生活作りのサポートを

今回見学させていただいたのは、川崎市麻生区はるひ野にある「犬のためのようちえん『犬の家 WanPeace(ワンピース)』」。オーナーの宮岡智子(ミヤオカトモコ)さんを中心に、犬たちにとって重要な「遊食住」を満たすことにより心身ともに健康で、人と犬とが楽しく快適に暮らせる生活作りのサポートを行っています。

犬の幼稚園ってどういうところ?

「犬の幼稚園」とは具体的にどういうところなのでしょうか?

一般的に私たちに馴染みのある「幼稚園・保育園」は、人間の子どもたちが小学校へ上がるまでの乳幼児期に通うことで共同生活を通じて社会性を学んだり、遊びの中から経験を積んで成長していく場所ですが、「犬の幼稚園」も同じような役割を持つようです。

「ペット先進国のヨーロッパでは、とにかく人と犬が普通に生活できるようにしつけるというのが当たり前。犬を飼ったら、まずは専門の施設(犬の幼稚園)で専門家に正しいトレーニング方法を教わるというのが基本です。日本でもこのような認識が広がれば、犬も飼い主も心身ともに健康に楽しく共同生活が送れるのではないかと思っています」と宮岡さんは話します。

オーナー兼ドッグトレーナーの宮岡先生

通園するワンちゃんたちは、朝から登園し日中は他のワンちゃんやトレーナーさんたちとトレーニングをしたり遊んだりして過ごします。そして、夕方には飼い主にお迎えに来てもらってそれぞれのお家へ帰っていきます。人間と同じように保育園に通うことで、家にいるだけではなかなか経験できない他の犬とのふれあいやプロの指導など、たくさんの刺激を受け成長していくのです。

ちなみに、こちらの幼稚園では、忙しい飼い主たちに代わって登園をサポートする送迎のサービスもあるそう。本当に人間の幼稚園と一緒ですね。

どういう犬が通っているの?

では、どういう犬たちが通っているのでしょうか。「基本的には飼い始めたばかりで、これからトレーニングをスタートするパピーが多いです。あとは、問題行動(吠え・噛みつきなど)に困って改善したいという目的や日中一人で留守番することが多い犬も通っています」と宮岡さん。

そもそも宮岡さんがこの犬の幼稚園の経営を始めたのは、過去に自分で初めて飼い始めた愛犬の問題行動に悩んだことがきっかけでした。その愛犬に手を焼き自分ではどうすることもできなかったある日、獣医師から家庭犬ドッグトレーナーがいることを聞き、そこから実際にお願いしたドッグトレーナーに教わることでその素晴らしさを知ることに。そしてそれが自身もドッグトレーナーを目指すきっかけとなり、通うことにしたトレーナーになるための養成所というのが、日本初の犬の幼稚園を運営されているところだったそう。そこで学んでいくうちに、犬の幼稚園の必要性を実感したそうです。

自身も愛犬のしつけで悩んだ経験があるからこそ、トレーニング初心者やしつけに悩む飼い主さんの気持ちにも寄り添えるのかもしれませんね。

「犬の幼稚園」は犬とトレーナーが二人三脚でトレーニングに取り組める場所

「WanPeace」では、オーナーの宮岡さんとトレーナーの大沼香織(オオヌマカオリ)さん、保竹達也(ヤスタケタツヤ)さんの3人がタッグを組んで、たくさんのワンちゃんのお世話&トレーニングに取り組んでいます。

ポジティブで落ち着いて物事を判断できる大沼さんと、元気でリアクションが大きく犬と遊ぶのがとっても上手な保竹さん。トレーナーの二人のチームワークもバッチリで通園するワンちゃんたちも、毎回先生たちに会うのを楽しみにしているそう。

小さい頃から犬が好きでこの仕事に就いたという大沼さんは飼い主のみなさんへ寄り添う気持ちを大切にしながら、安心安全にお預かりできるように心がけているそう。まさに、天職といった感じですね。保竹さんも「パピーたちの初めての体験を通じて、楽しい経験をたくさんさせてあげたいです。合言葉は『楽しむこと』です!」と優しい笑顔で話してくれました。

ドッグトレーナーの大沼先生
ドッグトレーナーの保竹先生

園に通うワンちゃんたちと楽しそうに触れ合うトレーナーさんたちを見ていると、しっかりとした信頼関係が築かれている様子が伺えます。

また、見学する中で印象的だったのはワンちゃんたちを褒める「いい子!」という声が常に飛び交っていたこと。トイレができたり、無駄吠えしなかったり、ちょっとしたことでもできたら、しっかりと褒めることが徹底されていました。大好きなトレーナーさんにたくさん褒められることで、ワンちゃんたちも楽しくトレーニングができるようです。

みんな先生のことがとにかく大好き。
真剣な眼差しで先生たちを見つめる姿が愛おしい。

「うちの幼稚園では各ワンちゃんに担当の先生が決まっているので、二人三脚でワンちゃんの個性に合わせた指導を行っています。ワンちゃんのペースや個性、飼い主のみなさんのライフスタイルに合わせたトレーニングをしていくんです。困った問題行動がある場合も原因を探り無理がないようにそのご家庭でできる解決法を提案していきます」。家に帰ってからも飼い主との暮らしが円滑に進められるように、トレーナーが責任を持ってその日の園での様子やできるようになったこと、自宅でできるトレーニングなどを連絡帳に書き込み、飼い主への連絡を行っているそう。そこまで、飼い主に寄り添い真剣に犬と向き合っているからこそ、それぞれのワンちゃんが抱える問題や個性にも柔軟に対応することができるんですね。

ペットホテルやしつけ教室との違いは?

では、同じようにペットを預けたりトレーニングが受けられる施設として、ペットホテルやしつけ教室、ペットシッターなどがありますが、幼稚園とはどのような違いがあるのでしょうか?違いを比べてみました。

ペットホテル

ペットのための宿泊施設。日帰り預かりから数日間の宿泊まで宿泊のスペースを提供するサービスを行う

しつけ教室

飼い主同伴で1時間から2時間ほどの時間トレーナーや訓練士から、しつけの仕方やトレーニング方法を学ぶ

ペットシッター

飼い主の留守中に、飼い主の代わりにペットがストレスを感じないように自宅で世話をするサービス

犬の幼稚園は上記の施設とは異なり、飼い主とトレーナーが長期的なカリキュラムを組んでトレーニングに取り組む場所です。そのため入園の前には、入念なカウンセリングを行い、その子の個性や飼い主の生活パターン、どのような関係性を築いていきたいのかをリサーチします。「たとえば、トレーニングで使用するコマンド(オスワリ・オテなどの合図の言葉)の各家庭で馴染みのある言葉を選んだりもします。家庭内でおしっこを「チーチー」、うんちを「プープー」というコマンドを使っているうちの子には、幼稚園でもコマンドを統一して、犬にも分かりやすくして、混乱させないようにしています」と宮岡さん。犬と一緒に暮らす家族がストレスなく楽しく暮らせるように長期的なプランを組んでトレーニングに取り組み、オーダーメイド感覚での愛犬に合うしつけやトレーニングを受けられる場所、それが犬の幼稚園です。

幼稚園の対象はパピーだけ?

犬の幼稚園に通えるのは人間と同じようにパピー(子犬期)だけなのでしょうか?

「WanPeace」では、成犬からでもスタートすることが可能で、年齢制限はありません。

基本的な社会化を学ぶパピーたちが在籍する「ようちえんクラス」のほか、ようちえんクラスを修了した成犬たちが通う「フリークラス」とクラス分けがされているので、飼い主たちも信頼をおいて幼稚園を修了しても長く通っているワンちゃんも多いそう。

「年齢制限はありませんが、成犬になってからだと、犬が苦手な子などには周りに犬がいる環境自体がストレスになるので、向き不向きがあり、問題行動を直すことが困難になる場合もあります」とのこと。ワンちゃんの性格によっては合わない場合もあるようです。

まだ飼い始めて間もない若い犬やトレーニングを積極的に受けさせたかったり、留守がちな飼い主におすすめの施設です。

費用はどれぐらいかかるの?

園によって異なりますが、「WanPeace」では一日約7時間の預かり(レッスン・遊び・お散歩など)で約7000円。ようちえんクラスは、体験4回コースから20回~40回(出張おうちレッスンが3回付)と回数制で預けることができます。

犬の幼稚園の一日のタイムスケジュール

登園
健康チェック
頭の上から肉球など細やかな部分まで異変がないかチェック。便や尿の状態などを確認します。
遊び
登園直後はワンちゃんたちも先生に会えたことがうれしくて興奮状態。まずは、担当のトレーナーがコミュニケーションを取りながら遊びます
お昼休憩
お昼を食べたり(※普段お家で食べているごはんを持参できます)、それぞれ自分のクレートに入って中でのんびりリラックス。クレートで大人しく過ごせるようになるトレーニングもこの時間に行います
フリー遊び
お昼寝の後は、自由に遊べる時間。犬同士で触れ合ったり、トンネルやアジリティなどおうちにはないような道具で元気に遊びます。遊びながらのトレーニングでいろんなことができるようになり自信にもつながります
レッスンタイム
楽しく遊んだ後は、それぞれの課題に沿ったトレーニングの時間。ワンちゃんが飽きないように工夫をしながら、そしてトレーニングが楽しい時間で終わるように無理強いはしません
お散歩レッスン
散歩中にほかの犬に吠える、人に飛びかかる、急に走り出すなどの問題行動をするワンちゃんはこの時間にトレーニング。基本は「お散歩を楽しむ」ことがメインです
休憩
ちょっと一休み
お手入れレッスン(グルーミング)
全身を清潔なタオルで拭いて、グルーミング。ブラッシングが苦手な子も、ホームケアができるように慣らしていきます
お迎え
担当の先生が今日あったことやトレーニングの内容、園での様子などを詳しく連絡帳に書いて飼い主に報告します
みんなに支給される幼稚園バッグがかわいい。
一頭ずつの連絡帳。中には先生からその日の様子が書いてあります。

みんな自分のクレートに入って休憩。クレートに入ることもトレーニングの一環です。

◎園内での愛犬たちの様子はインターネットの動画サービスを通じて、飼い主限定でオンライン公開も行っています。どのように過ごしているのか、様子を覗いて見られるのは飼い主としてはうれしいサービスですね。

みんな大好きアジリティでの遊びタイム。

みんなとっても楽しそうに生き生きと遊んでいました。

犬の幼稚園にできること

元々犬は、群れで生活をする動物。人間と一緒に暮らす飼い犬にとって、飼い主や周りの環境から影響を受けながら成長していきます。中でも、パピー期にいろいろな人や他の犬と接することで養われる「社会化」は成長過程でとても重要性が高いと注目されています。

そういった点を考えても、その犬の人生で一番大事なパピー期を犬の幼稚園でプロの指導を受けて「正しい社会化」を身に着けることで、成長した後でも人間や他の犬との関係性が円滑に結ばれることが多いそう。また、問題を抱えるワンちゃんを飼っている飼い主も、少し愛犬から離れることで、客観的に冷静な対応ができるようになる効果もあるようです。

犬たちも、共同生活で他のワンちゃんと触れ合ったり、遊んだりすることで真似したり、様子を伺うことで協調性を覚えていきます。

「トイレトレーニングがまだ終わっていない入園したばかりのパピーちゃんも、他のワンちゃんがトイレで排泄しているのを見たり、においを感じるからか、ここに来るとスムーズにトイレトレーニングができるようになる子が多いんです」と宮岡さん。他の犬たちの様子に刺激を受けながらトレーニングできるのは、ワンちゃんがたくさん通う幼稚園ならではです。

犬と飼い主をサポートする「WanPeace」の取り組み

「WanPeace」で行っている、通常のクラス以外の取り組みについてご紹介します。

トレーニング+αのサービスの連携も充実

「WanPeace」では、通常のクラス以外にも、近隣のフィットネスクラブと提携したプールやバランスボールなどの愛犬専用のフィットネスを受けることができる課外授業も展開。その他、トリミングサロンを併設しているので園内でトリミングを受けることもできるなどオプションも充実しています。

また、宮岡さん自身が厳選したこだわりのグッズやトリーツ・フードなどが揃った物販コーナーも人気。

飼い主とワンちゃんのさまざまなリクエストに応えてくれる園内は、明るく楽しい雰囲気にあふれワンちゃんがたくさんいるのに、犬の臭いが気になることも一切なく清潔感にあふれています。手入れの行き届いたお気に入りの慣れた場所で、安心して任せられるトレーナーのもと、愛犬を預けながらさまざまなケアが受けられることも人気の秘密のようです。

物販コーナーには他にもこだわりのグッズがたくさん並んでいます。
WanPeace別注のランフリーのこだわりドッグフード 。

飼い犬を通じて広がる人間関係。犬がつなぐ飼い主同士の絆

また飼い始めたばかりの子犬を対象にした単発のパピーパーティーや、通園するワンちゃんだけでなく飼い主とワンちゃんが一緒に参加できるお散歩会や遠足などのレクレーションイベント、ゲーム感覚で楽しみながらトレーニングができる「K9ゲーム®」のレッスンなどイベントも充実しています。

愛犬と一緒にイベントに参加することで、幼稚園を通じて仲良くなる犬友が増えると飼い主たちにも評判のようです。

「K9ゲーム®」の大会での様子。今も定期的にレッスンを開催しています。
以前行った遠足での様子。飼い主たちにとって楽しみのイベントのひとつです。

犬との生活がもっと楽しめる社会になるように

ここ数年のコロナ渦で、家にいる時間が多くなり新しく犬を家族に迎える家庭も増加。しかし、犬を飼い始めてしつけや社会化がうまくいかず悩みを抱える飼い主も多いという話も最近よく耳にします。実際「WanPeace」でも、最近パピーの受け入れが増えているそう。

「情報社会の現代。自分自身でネットなどからさまざまな情報を得られる一方、情報があふれすぎて、いろいろなことを自己流でやってしまいがちです。しつけ方やトレーニング法はその子その子とご家庭によって違うもの。楽しみながら、その子の良いところを引き出しながら、犬の気持ちを理解したり、犬との生活が楽しめるようにするためには、正しいトレーニングが必要です。上手にしつけができないと悩む前に、まずは自身に合った専門家の手を借りて相談することで道が開けるかもしれませんよ」と宮岡さん。

日本がペット先進国と同じように、犬と人がお互いに寄り添って楽しめる社会になるようになるためには、飼い主が責任をもって、プロの指導を仰ぎながらしつけに取り組んでいくことが必要なんですね。

「犬との暮らしを楽しんでほしい」私たちへのメッセージも込めて、最後にそう語ってくださった宮岡さん。話を伺う中で、宮岡さんからは何度も「楽しむ」という言葉が出ていました。そして、園の様子を見ていても、犬もトレーナーさんも楽しんでいる様子が伺えました。今回の取材を通して、犬を飼い一緒に過ごすとき、「楽しむ」ということを忘れてはいけないなとあらためて感じました。

さいごに

今回「WanPeace」で過ごすワンちゃんたちの様子を見学する中で一番驚いたのは、お昼休みに各自のクレートの中で騒ぐことなくゆっくりとリラックスして過ごす姿でした。周りの様子に惑わされることなく、安心した様子でくつろぐ犬たち。今まで、「ドッグトレーニング」と聞くと厳しい指導を連想していたのですがそういうことは一切なく、レッスン中も犬たちが楽しみながら課題に取り組んでいる様子が印象的でした。

新しく子犬をお迎えしてトレーニングがうまくいかなかったり、コミュニケーションが取れなくて悩んでいる飼い主には、自身と愛犬にとって頼りになる施設ではないでしょうか。もちろん悩んでいる方だけではなく、より犬の社会化を伸ばしたいという方にもおすすめです。たくさんのワンちゃんたちと触れ合いながら、犬同士にしかできない社会化を学ぶには打ってつけの場だと思います。

今は少しずつですが、こういった犬の幼稚園が増えつつあります。一人で思い悩まずに、正しい知識を持ったドッグトレーナーによる指導を受けることを選択肢に加えることで、愛犬の個性を伸ばして、人と犬との生活をより楽しくすることにつながるかもしれませんね。

NAME
犬の家 WanPeace
ADDRESS
〒215-0036 神奈川県川崎市麻生区はるひ野4-1-1 2F
  • Writer:おおくぼ あい
  • Photographer:森 景子
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