フランスの「犬の名付けルール」とは【ボンジュール!フランス犬だより】

フランスの「犬の名付けルール」とは【ボンジュール!フランス犬だより】

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INUMAG読者のみなさん、こんにちは。フランス在住INUMAGライターのMarikoです!フランス犬事情についてお伝えするコラム、「ボンジュール!フランス犬だより」。第4回目の今回は、フランスの犬たちの名付け方についてご紹介します。

犬好きな読者のみなさんの中には、「フランスの犬の名付け方にはルールがある」というお話を耳にしたことがある方もいるかもしれません。今回は、フランスの犬の命名に関わる少し変わったルールについて見ていくとともに、今フランスで人気が高いワンちゃんの名前などについてもご紹介します。

「生まれ年のアルファベット」を名前の頭文字にする

「フランスの犬の名付け方にはルールがある」。実はこれは、正解でもあり間違いでもあるのです。というのも、そのルールが適用されるのは「LOF(Livre des Origines Françaises)」という団体に登録された血統書付きの犬のみだから。つまり、これからご紹介するルールは純血犬種のみに当てはまるものであり、その他の犬を名付ける際には従う必要はないものです。

それでは、そのルールとは一体どのようなものなのでしょう。それは、「犬の生まれ年によって、ある特定のアルファベットを名前の頭文字にしなければならない」というアルファベット制度です。毎年「その年のアルファベット」が定められており、ワンちゃんの生まれ年の文字を名前の頭文字にとらなければなりません。たとえば今年2023年の文字は「U」。そのため、2023年に出生するワンちゃんの名前は、「Undy」「Uno」「Udson」といった具合に、「U」から始まる名前がつけられることになります。

ただ、これはブリーダーさんなど犬の出生場所で記載される、出生届上の「正式名称」のみに適用されていればよいとされています。正式書類にその名前が記載されてさえいれば、犬を迎え入れたあとで、家族ごとに正式名称とは異なる「通称」をとることもできます。これは通称なので、頭文字を指定されることはありません。ちなみにこのルールは、純血種の猫にも適用されているのだそう。

使用されるアルファベットは20文字

この「各年の文字」は、「A、B、C…」というふうに、毎年アルファベット順に変わっていきます。しかし、全26文字のアルファベットのうち「K、Q、W、X、Y、Z」の6文字はここから除外されています。この6文字は、フランス語の名前の頭文字としては一般的にほとんど使われることがなく名付けが難しいというのがその理由です。

全26文字のアルファベットのうち6文字が除外されているため、ちょうど20年ごとにアルファベットが一周していきます。つまり、2023年のアルファベット「U」が次に回ってくるのは、20年後の2043年というわけです。そう考えると、その年のアルファベットを頭文字とする名前への愛着が増すような気がしますね。

なぜこんなルールがあるの?

この少し変わったルールは、「犬の出生情報を整理するために」という理由で導入されました。フランスで1885年から続く犬の登録簿「Livre des Origines」に関わり生まれたものです。

この登録簿が誕生した当初、ブリーダーやバイヤーは動物が生まれたからといってすぐに登録する義務がなく、出生から数年後に登録するケースもあったのだそうです。そのため、当時の登録簿は出生年代順に登録されておらず、わかりづらいものでした。

そこで1926年、犬の血統書「LOF(Livre des Origines Français)」を管轄する現在の「SCC(Société Centrale Canine)」が設けたのが、この生まれ年によるアルファベットの名前制度です。この制度により、犬種に関係なく個体の名前から出生年を知ることができるようになり、登録簿の整理が容易になりました。その後、特定の文字を削除するなど現在のルールになったのは1970年代のことです。

フランスで人気の犬の名前

それでは、正式名称ではなく、犬の「通称」として人気なのはどのような名前なのでしょう。

フランスの複数のペットサイトによると、2022年に特に人気だったのは、Nala(ナラ)、Luna(ルナ)、Simba(シンバ)、Oscar(オスカー)、Léo(レオ)、Bella(ベラ)といった名前のようです。

日本のペットの名前でも、「メスらしい」「オスらしい」と感じる名前はあるものですが、名詞に男女の区別があるフランス語では、名前の男女性の違いがよりはっきりしています。中には中性的な名前も存在しますが、たとえばここで挙げたナラやルナ、ベラは女の子の名前。一方、オスカーやレオというと男の子の名前となります。

もちろん、正式名称をそのまま通称として使用する人もいます。たとえば、私の近所のワンちゃん、「Squall(スコール)くん」。彼は2021年生まれのワンちゃんですが、その年のアルファベットはスコールくんの頭文字である「S」でした。飼い主さんによると、「出生届の名前をそのまま使っている」とのことです。

ご近所さんのスコールくん。アパートの敷地内で、毎日元気に遊びまわっています。

日本のキャラクターにちなんで犬を名付ける人も

フランス人の友人たちに「どんなふうに犬の名前を選ぶの?」と尋ねると、何か特別な「意味」を込めるというよりも、「呼びやすさと音の響き」と回答をする人が多い印象です。この他にも、映画やテレビドラマなどの登場人物の名をあてる場合もあります。すでに紹介した人気の名前にもあったシンバ(「ライオンキング」のキャラクター)がいい例ですね。

日本のアニメやゲームはここフランスでも大人気なので、日本のキャラクターにちなんだ名前を耳にすることもあります。たとえば、私の友人の愛犬の名前は「ゼルダ」。そうです、あのゲームキャラクターにちなんでいるのだそうです。

さいごに

今回は、フランスの犬の名付け方についてご紹介しました。由来を知ると、とても合理的でおもしろいルールだと感じますよね。フランスの犬の情報サイトなどを見ていると、新年が近づくにつれ「来年のアルファベットはこれ!」と、犬の名前の候補一覧が紹介されていたりもします。20年周期で同じアルファベットが回ってくるため、犬たちの名前にはその時代のトレンドも象徴されており、眺めているだけでもおもしろいものです。

それではまた次回、フランスの犬情報をお楽しみに!

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  • Writer:Mariko Dedap
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