人気の犬の絵本7冊。子どもに最初に触れてほしいやさしく温かい名作の世界
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犬好きなら、映画や広告など犬が起用された作品につい心惹かれてしまうもの。今回はINUMAG編集部が、犬が登場する幼児向け絵本を7冊ピックアップ。編集部の感想も踏まえ、詳しく紹介していきます。犬のちょっとした仕草や表情を端的にとらえた絵本は、初めてこの世界に触れる幼い子どもたちだけでなく、大人にも日常の尊さを改めて気づかせてくれるものばかり。忙しい日常のなかでほっとひと息つきたい人も、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。
目次
子どもと犬の日常のひとコマを温かく描く『いぬ』
イギリスの絵本作家、ジョン・バーニンガムの「ちいさいえほんシリーズ」の一冊。谷川俊太郎が一連の訳を担当しています。生涯、発見に満ちた何気ない子どもの日常を温かなまなざしで切り取り続けた作者が、本作では1日だけ犬のお世話をする子どもの姿を描きます。大人にとっては他愛もない犬の仕草や行動も、子どもの目にはこんなにもきらきら輝きをもって映るものかと、日々の尊さに気づかされます。情緒ある活き活きとした描写に、作者の息づかいや子どもへの慈しみが感じられる一冊です。
- 男の子をなめたり、穴を掘ったり。そんな些細な犬の行動も、初めて犬に触れる子どもにとっていかに新鮮なものなのか改めて気づかされた。
- 楽しいときも悲しいときも、少しめんどうと感じるときも、「いつも犬と一緒にいたい」と願う、温かくまっすぐな子どもの心が描かれている。
鮮やかでにぎやか、眺めるだけで元気が出る『わんわん わんわん』
動物たちに人間の思いを投じ、ユーモラスな世界を表現し続ける絵本作家、高畠純が描く『わんわん わんわん』。犬の他にも、「ネコがニャーゴ」「ブタさんもぶひっ」と、さまざまな動物をイラストと鳴き声のみで表現したコミカルな一冊です。一見シンプルな絵本ですが、深く味わいのある筆使いや、愛嬌あふれる動物キャラクターたち、そしてニュアンスの違いを巧みに演出する文字使いが、子どもたちの感覚にまっすぐ訴えます。心を空っぽにして眺めているだけでも、元気を与えてくれそうな絵本です。
- 色彩豊かな背景と動物たちの姿、にぎやかに描かれた世界観が目に楽しい。
- 動物の鳴き声の大小を表現するように文字もさまざまな大きさで書かれており、躍動感がある。
- 動物の鳴き声と表情だけで起承転結のある魅力的な絵本。
犬のひたむきさをのびやかに表現『いぬがいっぱい』
イラストレーターとして活躍した、メキシコ生まれの作家グレース・スカールの作品。「おりこうないぬ」「しょんぼりいぬ」「げんきないぬ」などあらゆる犬が登場する、犬好きにはたまらない一冊です。カラフルでありながら落ち着いたトーンの色彩が美しく、ぱらぱらページを繰るだけで心が踊ります。犬たちのふとした表情や仕草を適格にとらえた描写に、つい愛犬の姿を重ねてしまう人も多いはず。生きることを純粋に楽しむひたむきさを、子どもだけでなく大人の私たちにも伝えてくれる絵本です。
- タイトルどおりたくさんの犬が出てきて、犬好きには楽しい一冊。
- 落ち着いた色調で描かれていてほっこりする。
- シンプルに描かれた絵で、小さい子どもにも犬の様子が分かりやすく伝わりそう。
やさしくもユーモアあふれる長新太の世界『チューチューこいぬ』
母犬とはぐれてしまった3匹の子犬が、おっぱいを求め冒険に出る物語。鳥や魚、人や月にまでおっぱいを求め「チューチュー」と吸ってみる子犬たちの姿が、切なくもかわいく、童心に帰って楽しめる一冊です。「ナンセンス絵本の神様」とも呼ばれた作者・長新太は、日本を代表する絵本作家。その代名詞が表すのは、年齢を問わず読者を一気に引き込んでしまう彼の世界観です。独特な色使いでも知られており、本作でも、暖色と寒色が不思議な調和を生み、子犬たちを包むやさしい世界を作り上げています。
- 「お母さんって唯一の存在」と子どもが感じられそうな物語。
- シンプルな絵に、メリハリのある色使いが印象的。
- ストーリーだけでなく、目で見るだけでもアートとして楽しめそう。
明快なストーリーと鮮やかな色彩に釘付け『こいぬのくんくん』
言わずと知れたミッフィーの生みの親で、生涯120作もの絵本を創作したオランダのディック・ブルーナーによる子犬の物語です。においを嗅ぐのが得意な子犬の「くんくん」が、動物たちに手がかりを聞きながら、迷子になった女の子を探し出します。明快なストーリーと鮮やかな色彩で、喜びや葛藤といった感情を分かりやすく大胆に描き、子どもの心をぎゅっとつかみます。「幼いころ愛読した」という人も多いかもしれません。登場するキャラクターすべてが愛らしく、本を開き飾っておくだけでもうれしい一冊です。
- 心が踊るようなカラフルな絵に、幼児が釘付けになりそう。
- なかなか女の子を見つけ出せない葛藤が描かれている。
- 女の子を見つけたときの心の動きや、ふたりが抱きしめ合う描写が感動的。
犬とくまの不器用でほほえましい友情『いぬとくま いつもふたりは』
どんなときもふたりで過ごす、犬とくまの友情を描く一冊。3話で構成されており、それぞれのストーリーをとおして、人懐こいダックスフントとどこかクールなくまという対照的なふたりが個性的に描写されています。2歳のころから絵を描き始めたというニューヨーク生まれの作家、ローラ・ヴァッカロ・シーガーが綴るちょっと不器用なふたりの友情に、読み手はくすっとほほえんでしまうはず。瑞々しくもやさしい筆使いに犬とくまの息吹を感じ、何度でも読み返したくなってしまいます。
- 「かまって!」と追いかける犬に、あしらうような大人な雰囲気のくま、2匹の掛け合いがほほえましい。
- 色使いがあたたかくほっこり。
- お互いに「いぬ」、「くま」と呼び合うのがかわいらしい。
テンポのよさと躍動感がクセになる『おっとっと』
詩人であり絵本作家の木坂涼が物語を、高畠純が作画を担当した『おっとっと』。仕事に奮闘する犬のお父さんの1日を追いながら、同時に、擬人化されたさまざまな動物たちのハラハラ場面を愉快に描きます。次々と移り変わる場面にドキドキ、読んでいるこちらまで、身を乗り出して「おっとっと」と声を上げてしまいそうになります。詩人ならではの韻を踏んだリズミカルな言葉使いに、子どもはお話を聞いているだけでも心地よく感じるでしょう。お話にぴったりの躍動感あふれる絵も楽しい、勢いのある作品です。
- テンポのいい文章とコミカルな絵が読みやすい。
- 思わず「あっ」と手を出したくなるくらい物語に吸い込まれる。
- デフォルメされた絵がクセになりそう。
さいごに
ひとこと「犬が登場する絵本」と言っても、作者の見方や表現の数だけ物語の形があります。しかしどの絵本にも共通していたのは、犬の存在をとおし、個性の違いを認めることの大切さや、ふとした日常のすばらしさを語っている点でした。子どもたちに最初に触れてほしいのは、そんなやさしい世界です。アートとしても質の高い絵本は、お部屋に飾ってもおしゃれでおすすめ。動物が登場する絵本を選ぶ際、ぜひ参考にしてみてくださいね。
- Writer:Mariko Dedap